思えば長かった。
自分がwebsiteの更新意欲というものを失ってからどれほどの月日が経過しただろう。大学に入って以来数年、WWWという物に取り憑かれ、自分の一挙手一投足がwebという広大なスペースの上に反映されるということだけで最初は嬉しかったっけ。そしてまだ見ぬ「情報発信」への憧れを心に抱いていた。しかしいつからか、それが何か別の虚栄心にも似たものへ変わっていった。多くの内容的に優れたサイトを見ていく過程でやはり多くのデザイン的に優れたサイトにも巡り会うことを重ねていったおかげで、いつしか俺はページの見た目の方にとらわれていった。俺のページに前からアクセスしてくれていた人達なら分かると思うが、デザインをうんぬんするセンスもスキルもないくせに一所懸命自分が目を奪われたページ達に追い付こうともがいていた。
もう、見た目にとらわれるのはやめよう。
その決心がついたのは前のプロバイダーとの契約が切れた時。(といっても結局同じ所と後で再契約したのだけど。)そして自宅のiMacが壊れて冷静に考える時間を置けたことで、この決意はより確かな物になっていった。
そしてiMacが治ったのは6月の中旬だったが、忙しさにかまけ、またどんな内容にするか考えなかなかふんぎりがつかなかったため本格的に更新するのがこの時期まで遅れてしまった。といっても結局は単なる雑記置き場としてのスタートを切ることになったのだが、そんな自己満足的なページでも良いだろう、と妙に開き直ってしまえるのが自分で言うのもなんだが俺の今の強み。内容はそのうち適当に増えるときゃ増えていくさ、と変にお気楽な俺であった。
そして実を言うと先程の見た目に対する執着を(完全にとは言えないまでも)取り去った今回が一番見栄え的にも良いと感じているのである。不思議なものだ。まあ最低半年は見た目いじらずにこのまま行くのである。うむ。
それとこの時点では掲示板という物がこのサイトにはないのだが、これはここが掲示板を置くに足るサイトではない(大体書き込みの少ない掲示板見ていても淋しいだけだ)ということと、次に掲示板置くなら絶対に自作の物を置きたい、という欲望があるからである。只今ちょこちょことCGI勉強中。
前置きはここまで。ということで。今日は最近で一番「夏」を感じたことを書いておこう。
先週の土曜日、卒業アルバムの写真撮影で集まり皆で酒を飲んだ帰りにある友人の家に泊まった翌日の事。けだるく「笑っていいとも増刊号」を見た俺は家路につくべくその男の家を出た。しかし出た直後に重大なことに気付いた。
金がない。
前夜の影響で俺の財布には一銭たりとも金がない。不幸なことに今いる所、具体的に言うと東京都北区王子は俺の定期券の範囲外。交通費(地下鉄190円)が…….
そう、普通ならそこで引き返し、「ごめんお金かして」とか言って頼めば良いのだが、またしても前夜の影響で妙にプライドの高くなっていた俺は(暑さで気が狂っていたのかも知れない。)愚にもつかない決断を下したのである
「定期の利いているお茶の水まで歩く。」
それは距離にすると10km強の道のりであったが、昼真っ盛りという時間帯と照りつける日射しがその距離を永遠にも感じさせた。しかし俺は前夜の影響で鼻息だけは荒かったので「これぐらい何のことがあろう、 速攻歩き切ってやるわっ」と鼻高々で出発したのだった。
明治通りを歩いて西巣鴨に出る。この時点でかなりの体力を消耗し交差点のコンビニで30分も立ち読みと称して涼み店員に白い眼で見られる。そんな視線も気にならない程俺は疲弊していた。
やっとのことで歩き出し巣鴨を通る。日曜日ということもあって「じいちゃんばあちゃんの原宿」こと巣鴨は人の群れで溢れていた。特に「じいちゃんばあちゃんの竹下通り」と言うべき巣鴨地蔵通り商店街は暑さをものともしない活気を呈していた。じいちゃんばあちゃんだというのにこの人達は全然そんなことを感じさせない元気さを保っている。スゲェと感服すると同時にだらしがない若い者としての自分のへたり具合を嫌と言う程感じさせられ結果として疲れ倍増もう嫌々早く帰りたいけどまだ全然距離が残ってるしもうダメダメ誰か何とかしてちょうだいじゃないとここで泣いちゃうわよ、おーんおーんという感じで足取りがさらに重くなったわけである。
重い体を引きずりやっとの事で辿り着いた千石(地下鉄で巣鴨の次)。そしてそこのコンビニの窓をのぞき込んだ俺はあるものの存在に気付いた
アイス売り場。
そうだ、やはりこういう日はアイスで涼しくペロッといくのがサイコーだぜぇってな気持ちで浮き足立ったはいいがいかんせん金がない、いやちょっと待てよ財布の中の10円玉の力を合わせれば60円くらいあるかも知れない、そしたら棒アイスが1本買える、どうだっ??そして俺は財布の中身をほじくり返して10円玉の数を数えた
1枚、2枚、3枚、4枚、5枚、6枚。
やった!!これでアイスが買える、買えるんだぁぁっっと喜びいさんでソ-ダ味のアイスを速攻購入。速攻でビニールを取りかじりつく
ひゃっこい、ひゃっこいよ母ちゃん。
口に含むそばから涼しさが俺の脳髄から背中を通りつま先まで満たしていく。これは幼い日々、夏の夕暮れに友達と汗まみれになるまで遊んだ後に駄菓子屋に行ってなけなしの金をはたいて買うアイスキャンディの味ではないか?懐かしさもこみあげひたすらにアイスをなめながら歩く。その度に失われた元気が湧いてくるようだ。気付けばすれ違う大人達が俺の方を羨望のまなざしで見ているではないか!!そんなささやかな優越感も俺の力となり、歩むペースをますます早めていった。
そしてあらかたアイスを食べ終わろうとする頃、今年初めての感覚が頭まで突き抜けた
キーン
俺の脳みそを刺し貫く微痛。ああこれだ、これこそ正しい夏のカタチだ、と俺は独り合点して微笑んだ。